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第19回 「T’sたんたん」誕生秘話(3)

T's ストーリー

第17回、第18回で、『T’sたんたん』がどのような経緯で誕生することになったのか、オープン直前の段階までお話しさせていただきました。
第19回は、オープン直前のお話をさせていただきます。

『T’sたんたん』の店長さんと副店長さんが決まりました。
名刺交換をさせていただく時にも、またまた不思議なことが!
なんと店長さんも、副店長さんもやはり「T」で始まる方なのですね。
思わず、N社の方に、「店長さんと副店長さんになる方を「T」で始まる方で探されたのですか?」と聞いてしまったほどです。(笑)
もちろんそんなことはないのですが、自然とこのような形になっていく・・・というのも、やっぱり面白いですね。
店舗を開く…ということは、すべて1からやっていくということです。
アルバイト募集をはじめ、面接を行い、マニュアルを作って研修をしていく・・・
食器、厨房器具、店内の必要備品の発注、食材の受発注の件、業者との契約・・・
まだまだあります。
3月上旬は、毎日やることがたくさんあって、今思うと、店長と副店長、関係者、みんな日にちに追われて、大変だったと思います。
どんなことでもそうですが、オープニングというのは、1回限りのこと。
そこに携われるということは、大変なこともありますが、それ以上の喜び、感動を味わえます。
今こうして『T’sたんたん』のストーリーを書くにあたり、当時のことを思い出すと、すべてがドラマなんだなぁ・・・
ドラマと言っても、誰かが脚本を作って、それに基づいて演じているのではなく、「真実のドラマ」なんだなぁ・・・
一人一人配役が決まっていて、自分ができる分野をしっかりやっているんだなぁ・・・
と思います。

私たちの役目は、自由が丘『T’sレストラン』が創作した味を、『T’sたんたん』のメンバーの方に、再現していただくことです。
動物性を使わないという考え方、健康に対する考え方もご理解していただきながら一つ一つ進めて行きました。
無駄な動きがなく、スムーズに、手際よく、作業ができるように、厨房マニュアルを作ったり、実際に厨房に関わる方に伝授したりしました。
ソフトの部分とハードの部分を限られた時間の中で共有して行ったのです。
本当にお忙しい中、N社の皆さんが熱心に受け止めてくださったこと、今改めて感謝の気持ちで一杯になります。

また『T’sたんたん』では、東京駅の駅構内という立地的なこともあり、スピーディーさも必要です。
量も確保していなければなりません。
各種業者さん選びも最後の最後までどうなるか…ということがありました。
一時は、メニューを作る段階で、まだこの食材の仕入れ先が決まっていないのだから、これは、メニューから外そうか…という話もありました。
でも、私たちは、「いい物を提供したい!貫き通そう!絶対に探せばあるはず!絶対にあきらめない!」という気持ちで、壁に立ち向かいました。
実際に、一生懸命、真剣に努力していたら、ぎりぎりであっても、ちゃんと出会えるんだ!という嬉しい体験もしました。
そんな時は「やったぁ!」という歓喜の気持ちと同時に、涙が出てくるような感動の気持ちで一杯になりました。
今こうして「T’sストーリー」を書きながら、当時を思い出していると、あの時の必死さ、ハラハラ感、不安感を思い出しますが、それ以上にやはり「絶対にいいものを出したい!」「あきらめない」という気持ち、いつも自らを追い込まず、苦しまず、落ち込まず、楽しい気持ちが上回っていたことで、いい結果、形になったんだろうなぁ…と思います。

そして、いよいよ『T’sたんたん』引き渡しの日がきました。
いつもどっちにしようかな…と迷う時に、常に真剣にどっちがプラスなのか?と考えました。
プラスを選んで進めてきたものが、目の前に形になってあります。
手前みそですが、とっても素敵な空間!
デザインもポップも夢にあふれています。
あの時にこう悩んだ椅子が今こうしてきれいにおさまっているな!
このポップデザインはやっぱりこれでよかった!・・・
嬉しさと感動で胸が一杯になったのを思い出します。
きっとまたここで生まれるドラマがたくさんあるんだろうなぁ…と思いながら、店内を見渡しました。

実は、2011年3月11日引き渡し当日、朝11時ごろから、自由が丘『T’sレストラン』で、テレビ局から『T’sたんたん』への取材がありました。
私は、そのため、『T’sたんたん』引き渡し立ち合いの私の役目が終わったところで、すぐ、自由が丘『T’sレストラン』に向かいました。
お店に着くと、ちょうど、アナウンサーの方とメニュー開発したスタッフが、『T’sたんたん』のメニューとなっているお料理を前にして、会話をしているところでした。
また、これも不思議なことに、店内を見渡すと、『T’sレストラン』の担々麺が大好きで、何度もご来店してくださっているお客様が、ちょうどお友達とお食事をされているんですね。
テレビ局のディレクター、「T」さん(これもまた不思議なこと!)は、お客様にもインタビューしたい!という気持ちがあったそうで、運よく、マイクを向けさせていただき、そのお客様も快く、感想をお話してくださっていました。
お昼頃でしょうか、『T’sレストラン』での取材も無事終わり、それから、テレビ局の皆さんは、東京駅のエキナカ京葉ストリートに向かい、引き渡しを終えた『T’sたんたん』の店内写真も撮る予定にされていました。
その放送は、3月14日の夕方、つまりオープン日が3月20日となっていましたので、その前に、全国に予告として、放送されるようになっていたのですね。
でも・・・
つまり、その取材が終わって、3時間もたたない時に、予期しないことが起きたのです。
その日は3月11日だったのです。
14時46分、太平洋三陸沖を震源とする大地震という不幸がおきました。
その瞬間、今までに体感したことのない激しい揺れ、もう止まるだろうと思ってもずっと続く強い揺れ、体が船酔いしたかのようなひどい揺れ、ビルがこのままどうなってしまうんだろうか・・・というような不安にさせる揺れ。
東京でも震度5という大きな地震でしたが、東北地方の方々は、これ以上の強震で、こんな言葉では言い尽くせない思いだったことと思います。
この地震によって、停電が起きたところもたくさんありましたし、もちろん交通網は全部ストップ。
この時を境に、日本中、すべてが変わってしまいました。
『T’sたんたん』もそうです。
当初3月20日東京駅エキナカ、京葉ストリートがオープンする前に、JRリテールネットさんが3月17日に内覧会を予定していました。
この日には、たくさんのマスコミ関係の方にもいらしていただくことになっていました。
しかし、この地震によって、この内覧会も中止となりました。
また、生産や物流の滞り、トレーニングの不足など、不安要素がたくさん起きました。
でも、こういう状況の中、開業は予定通り、3月20日に行うということが決定。
つまり、京葉ストリート全体が、サイレントオープンのような状況です。
毎日照明も最低限の中、私たちができることをやっていきました。
3月11日引き渡しということでしたので、11日午後から、店内の備品、食材、食器、厨房器具など到着となっていたのです。
たとえば、納品が決まっていたビール「ハートランド」は、地震によって、全部割れてしまい、在庫がなくなってしまうという予期しないことが起きました。
どこでもそうでしょうが、想定外のことがたくさん起きました。

3月20日オープンということが決まっているので、アルバイトの人たちの研修もスタート。
味のチェックも何度もしました。
N社の方、たくさんの方が毎日来てくださり、一つ一つ食べて感想を言ってくださいました。
当初、マスコミの方たちに、「3月20日東京駅エキナカ、京葉ストリートオープン」ということで、『T’sたんたん』を紹介していただき、お客様に認知していただけるんだろうなぁ…と思っていましたが、それもなしとなりました。
本来3月14日にテレビ放送されるだろう…と思っていた番組も、幻の取材となったわけです。
また、『T’sたんたん』が、京葉線を使う方々に一番、目にしていただける場所にあり、ディズニーランドに行かれる方に、利用していただけたらいいな…という期待が、なんとディズニーランドがしばらくの間休園ということとで、いったいどうなるんだろうか…ということもありました。
新幹線改札口にも近いところに、京葉ストリートがあるのですが、東北新幹線ももちろん動きません。

でも、日本中が大変な状況下にある中で、こういう風にお店をオープンさせていただけることを心から感謝し、逆に、サイレントオープンだからこそ、今の自分たちにできることを毎日しっかりさせてもらおう!という気持ちにもなりました。
今思うと、あのころの東京駅構内は、本当に暗かったです。
照明も今も節電していますが、もっともっと暗かったです。
東京駅ってこんなに人がいないだろうか…と思うほど、人通りも少なかったです。
いつ交通機関が止まってしまうかと思い、どこにも寄らず、用事がすんだらすぐ帰宅される方もたくさんいられたんですよね。

オープン当初は、営業時間も短縮時間でした。
4月11日から、7:00~23:00という通常営業となりました。
復興には程遠いものを感じながらも、だからと言って、自粛ムードで過ごしていては、経済が停滞してしまう!一人一人がいつも「健康」で、元気を発信をしていけたらいいな!と思いました。
そして、現状で生産が可能な人は、今後のことを考えて、できる限り日本経済に貢献し、被災地の方々への支援の一旦を担えればいいな、と考えました。
東京駅エキナカ『T’sたんたん』は、自由が丘の『T’sレストラン』とともに、「食」を通して、私たち誰もに必要な「健康」を伝えていくお店です。
『T’sたんたん』でお食事をしてくださる方、お一人お一人に、お野菜と大豆ミートだけで作ったものなのに、こんなにコクがあって美味しいんだ!体にやさしいんだ!ということを味わっていただきたいと思って、できたお店です。

この世に命がある人誰もが幸福になるために、幸福を味わうために、色々な願いや希望を持っています。
でも、その根本にある大事なものは、なんといっても、「健康」です。
「健康」であったら、また、どんな状況になっても、立ち向かう事ができます。
毎日私たちは、3食の食事をします。
食べることは健康を維持するために大事な要素です。
その食事を通して、自分自身の体のことを大切に思う気持ち、体が喜ぶ食材がこんなものがあるんだよ!とお伝えできたら嬉しいなと思っています。

2011年3月20日に誕生した東京駅エキナカ『T’sたんたん』。
大変な中でオープンさせていただいて5か月が経ちました。
お客様のお声に日々、色々学ばさせていただいています。
当初のメニューから新たな美味しさも一つ一つ誕生しています。
毎日いろいろなドラマが起きています。
その度に喜びを感じます。
そして、皆様に感謝をしています。
さて、東京駅京葉ストリートの『T’sたんたん』はこれからどのようなお店になっていくのでしょうか。
楽しみにしています。

来月、9月25日は、自由が丘『T’sレストラン』誕生2周年の記念日です。
月日がたつのはは本当に早いなぁ、そう実感している毎日です。

T’sストーリーについて

当店のオーナー 下川 祠左都による「T’sストーリー」は2010年1月から始まりました。専業主婦からレストランの経営者へ。そこから始まる物語をつづっています。

ぜひ最初からご覧ください。

第01回 「プロローグ」

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